コンラッドvsダイケンジャー
それは大賢者の一言から始まった。
「ねぇウェラー卿、今日は日本では節分なんだけど、ウェラー卿は節分知ってるかな?」
「セツブン…ですか?」
地球に行ったことがあるといってもアメリカにいることがほとんどだったので、日本の行事には疎い。
けれど、どんなものか知らなくともこの腹黒(お前が言うか)大賢者の言い出すことは(自分にとって)嫌な予感がして背筋に冷や汗が伝う。
「節分って言うのは誰か一人を鬼に見立てて『鬼は外、福は内』って言って豆を投げ付けて一年の災厄を追い出す行事なんだ」
「あれ?鬼って別にいなくてもいいんじゃ…」
大賢者の都合のいい解説にボソリとユーリはツッコミを入れるが、それは虚しくもスルーされてしまう。
「そこで、ウェラー卿に鬼をやってもらいたいんだ(災厄をはらうついでに腹黒もはらってしまうといいよ)」
「いえいえ、そこは言い出しっぺの猊下がやられては?(あなたこそ鬼畜腹黒をなおしては?あぁ鬼畜には鬼の字が入ってちょうどいいじゃないですか)」
「僕がやってもいいけど、この行事を知らない人に目撃されたら君が不敬罪に問われてしまうよ?(それを言ったら君の方こそ鬼畜じゃないか)」
二人の間には目に見えない火花が散っていた。
言わずもがな、二人は括弧に書かれた内容で話している。
しかし、おニブちんのユーリは建前に隠された二人の本音に気付かない。
「なんで二人とも鬼の役なすりつけあってんの??」
ユーリの疑問は場の空気に似つかわないのほほんとしたものだった。
しかし、その疑問に素直に答えられる者はこの場にはいなかった。かろうじてユーリの後ろで色を無くして成り行きを見ていたヨザックがヒントをくれたくらいだ。
「…二人の性格の共通点を考えてください……」
そのヒントにうながされ、数秒ユーリは考えて答を導き出した。
「あぁ、腹黒!」
流石に鬼畜までは思い付かなかったようだが、ようやく恋人と友人の本性に気付きつつあるようだ。
「渋谷?」
「ユーリ?」
しかし、それに反応した村田の視線とコンラッドの笑みにただならぬものを感じて、震え上がったユーリはヨザックの後に隠れてしまう。
そんなこんなで(眞魔国での立場など)鬼はコンラッドに決まった。
「まあ、豆くらいたいした痛みはありませんからね」
が、その言葉に大賢者の眼鏡が光を放つ。
「甘いね、ウェラー卿」
そういう村田の後ろにはいつの間に準備したのかなんとなく使い道の想像できる道具が…
そして、ユーリに渡された豆が小袋なのに対し、その中には大量の豆がヨザックによって投入されていた。
「じゃあ、いくよ。」
そういって村田がハンドルを回すと一気に30粒ほどの豆が装置から勢いよく発射(!)される。たかが豆であろうとあたればかなり痛そうだ。
咄嗟の事ではあったが、英雄と讃えられるコンラッドはその反射神経を駆使しかろうじて避ける。
村田が狙いを定め豆を発射し、それをコンラッドが時には剣を振るって回避するという凄まじい攻防を目にしたユーリは、村田の豆が尽きるまでの小一時間ほと一粒の豆も投げず、ただ呆然と観戦してたという。
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